私には幼少期から心惹かれるものが二つある。

一つは、鋼などの金属。一つは職人による手仕事だ。

一見両極にあるようなこの二つが、ある時私の目の前に同時に現れた。縁あって訪れた鍛造工場。そこでは手仕事というイメージとはかけ離れた武骨で大きい製品を作っている。しかし、何トンもあるハンマーが打ち出す轟音と火花の中には、人の手でするべき仕事があった。真剣に手を動かし体を動かす職人達の姿は、私にとって新鮮な発見だった。

私は職人の仕事に少しでも近づきたくて、休日にも工場内を見せてもらうようになった。誰もいない構内。しかし薄暗く無音の作業場を歩くと、そこここに彼らの仕事が見えてくる。片づけられた道具、無造作に置かれたウエス、使い込まれた椅子などに。そしてなぜか嬉しくなり頬が緩んでくる。

この展示は、鍛造作業を撮ったものでも、大好きな鋼の質感を撮ったものでもない。鋼を操る職人と仕事。その存在が感じられることが嬉しくて、彼らの気配にシャッターを押した、そんな写真である。