VICEとは日本語で悪徳であり、この言葉には価値判断が多分に含まれている。
美徳も悪徳も本来存在しない。
人間にとって実現が難しく好ましい性質 を美徳と呼び、人間にとって常態化していて好ましくない性質を悪徳と呼ぶ。
つまり普通に暮らしていれば美徳は出現せず、人間は悪徳に染まりきるものなのだ。
自然な状態を否定して、不断の努力によって異常な状態を維持しなければ、人間はただの獣である。
そしてそんなことができる獣は少ない。

貴重であるから美徳は良しとされ、”人間”は良しとされるのだ。

これは何も暗い気持ちになる話ではない。
悪徳とは要するに人間の常態を表しているだけだ。
怠惰で傲慢で我慢がきかない、極め付けは他人を攻撃していい気になるのが人間であり、それの何が悪い のか?
もちろん、悪いに決まっている。

鳥彦

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京都在住の版画作家・鳥彦さんの新作を紹介いたします。
今年のタイトルは「VICES」悪徳。
ダークサイドに転がり落ちないように、作品上に登場する鳥人間たちは良きものであろうとしているのか？
鳥人間は我々人間の写し絵なのでしょうか？
50点に及ぶ暗闇に浮かぶ絵に、人間として何を見るのか。

鳥彦作品の想像から生まれた魅力的な世界観、
細部に至る質感は今回また力を増しています。