ヒマラヤの王国ブータンは国民総幸福を大切にするという。 小国が競ってGNP向上を目指す中、国の自然を守るために木の伐採制限をしたり、外国からの鉄道架設提案を拒否したり、観光客ビザの制限などなど、ニューヨークで得た情報はいずれも僕に羨望と敬服の念を抱かせるものだった。 実際に訪れてみると、人々の欲望、自我の少なさに感心するばかりだった。 Gross National Happiness (GNH)＝国民総幸福を絵にしたらこうなる、と知り合った王立ブータン研究所長、そして画家でもあるダショー（貴族）カルマ・ウラ氏が見せてくれた彼の壁画は、『一つ屋根の下で３世代の家族が一杯のお茶と一握りの麦こがしをいただきながら談笑する図』であった。 思い出してみると日本も僕の子供時代には同様の図がそこここの家庭で見られた。しかし日本は西洋文化的発展の道をとり、物質的にはブータンと比較にならない発展を遂げたが、同時に失ったものも大きかったと思わざるを得ない。 ブータンの犯罪率は世界でも類を見ないほど低い、というよりも西欧諸国と比べると無いに等しいという。 毎日片道2時間をもかけて山道を歩いて通学する子供達。5歳にも満たないであろう小さな子供の手を引いて歩く、少し年長の学童達。 写真を撮ってあげるから、と言うと何の疑いも持たずに車に乗り込んでくる子供達。 旅人の心を本人でさえも驚くほど平和に、そして優しくしてくれる土地。 国民総幸福度の高い国とはこういうものかもしれないと納得した。 今現在も、これからもこのような優しい国であって欲しいと願っている。

（本展に寄せたエッセイより抜粋）

 

関連企画

１）作家との対話の時間　　１１月２３日（祝）15時ごろ〜19時
作家在廊します、どなたでも自由にコミュニケーションが取れます。
日没ごろからお飲み物をご用意させていただきます。

 

２）井津建郎＋大竹昭子　ギャラリートーク

１１月２５日（土）１４時〜１５時半ごろ
予約制　参加費　1000円

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