私がまだ幼かった時に祖母から聞いた話。
祖母は、結婚式当日まで祖父の顔を知らなかったと言う。
その話を聞いた私は、知らない人といきなり結婚するなんて…と不思議に思ったものだった。

　昔から日本には、お見合いと言う結婚を希望する男女を親や知人や第三者が引き合わせる習慣がある。しかし本当にそれで幸せになれるのだろうか？私は、このお見合いと言うシステムに常々疑念を抱いていた。
明治、大正、昭和の時代を逞しく生きた祖母は、沢山の孫や曾孫に囲まれて何時も幸せそうに見えた。そんな姿を見ると、お見合いもまんざら悪くは無いのかもしれないと思える。

　『想いのままに、楽しく暮らしなさい。』

田舎の病院のベッドに横たわり、私に残してくれた祖母の最後の言葉。今でもその言葉は消えることなく、私の心の中で暖かな光を放っている。