Exhibition
Room 1企画展
キリコ展「school goods」
キリコ
会期:2021.06.22(TUE)- 2021.07.04(SUN)
12:00-19:00(月曜休廊・最終日16:00まで)
この度ルーニィではヤマキファインアーツ(神戸)さんからの巡回で、キリコさんの「school goods」を展示いたします。
本作は、母親になり、彼女に起こったモヤモヤした感情が発端となっているそうです。
人は誰しも、その人の立場において無数の「モヤモヤ」を経験しています。
しかしながら「これは当たり前のこと。誰もがやっていること」とモヤモヤを心の引き出しに押し込めてはいないだろうか?
キリコさんの今回の作品を神戸で拝見して、こんなことを思いました。
「当たり前」「みんなやっている」と、自分を納得させて。
フェミニズム的な観点で社会運動がしたいわけではない。神戸でお会いした時、そうキリコさんは話してくれました。
しかしながら、キリコさんの作品は湖に投げられた一つの石のように、私の心に波紋を起こさせました。
幼い頃の母を思い出し、美しすぎる学童のための「道具」(作品)に強い違和感を感じました。
声なき声、白く、汚れのない”school goods”
あなたは何を感じるのでしょう?
ルーニィ 杉守加奈子
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キリコ「school goods」(協力:Gallery Yamaki Fine Art)
私はこれまで女性の幸せや生き方について、自分自身の経験と重ねながら作品を発表してきた。
近年子供を出産し、母になることで私を取り巻く環境は大きく変化した。
幼稚園の入園が決まると通園グッズを準備するためのプリントが配布された。
どれもサイズが指定されていたり園特有の細かい指示があり、既製品ではなく「手作り」をしないといけないものだった。
ミシンも持たない私にとって、それが母親の当然の仕事であるかのごとく伝えられたことは驚きであり、とても違和感を感じるものであった。
私はなにか釈然としないながらも、まるで何かの呪縛に取り憑かれた様に制作をはじめ、せっせ と手作りグッズを増産させていく。
時代が変わり、社会状況や子育ての概念も大きく変化した様に思うが、手作りのレッスンバッグや巾着袋を母親が作るという制度は50年以上前から続いており、形やデザインもそれほど変わっていない。
もはや日本の伝統の様に根付いた学校用品は、社会から漠然と期待される目に見えない母親像の象徴の様にも見える。
本作品では変わらない手作りグッズを変わらない「母のかたち」の一端として捉え、普段は声に出しても消えてしまうような母の声や、評価されない手作りグッズたちを拾い集め、具体的なエッセンスは残しつつも本来の用途をなさない形 に変換することで、新たな価値づけを試みた。
私はこれらの作品と向き合うことで、今日の母親やそれを取り巻く環境や、社会に根付いた「母親像」や「母性」の 意味を改めて捉え直したい。