「NIRVANA / STILLNESS」

　日本的なるものへの畏敬と、仏教的世界観をベースに、20019年より京都写真美術館で行った4回の写真展からの自選作品と、2023-24年に制作した作品を加え、「ピエゾグラフィー作品展」として再構築したものである。

　見ることのできない「NIRVANA」に誘われ、岸辺に立つ。黙して彼岸をなすすべなく眺める。すべてを映す水面が風に揺れ、モノクロームの階調に溶けてゆく。「見たい風景」と「見える風景」の余白が重なる時、寂びく光は小胸に溶けて、水底で揺れる。ただ美しいというだけでは淋しい。そんな儚い残影のような世界だけをを信じることができれば、それだけでいいと思う。有限性を回帰させ、その痕跡を1枚のプリントに内在させることができれば、それだけでいいと思う。